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2012年

10月

22日

ケータイ(携帯)小説人気は新たな出版、エンターテインメント市場創出の起爆剤

この記事は2007年メディアサボールに掲載された記事です

 

一般人の本離れが進む一方で、高校生読者を中心としたケータイ小説が人気だ。

▼(読書週間 本社世論調査 本離れ懸念 世代で差)
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20041028bf01.htm

▼(今時中高生の読書はケータイ小説?)
http://www.news.janjan.jp/culture/0702/0702099763/1.php

 

 ケータイ小説ブームの火付け役は、2000年、携帯サイト「ザブン」を開設した、『Deep Love 』(スターツ出版)シリーズの著者yoshi。書籍の発売は2002年。

 しかし、サイト開設当初は渋谷で、名刺にURLを書いて自分で配る日々を重ねた結果『DEEP LOVE』へのアクセスは、一日20万件になり、渋谷の女子高校生を中心に大ブームへ発展する。

 

 一文、一文の行間の広さ、情景描写が少なく、会話が中心になって進行していく。内容も、「援助交際」「エイズ」「レイプ」「ホスト」など思春期の女の子たちの琴線に触れるものが多かったことが成功の理由とされる。 yoshiの成功をきっかけに、 携帯Webサイト「魔法のiらんど」をはじめとして、素人作家のケータイで手軽に読める小説が大ブレイクし、2007年に書籍化された『恋空』(美嘉・スターツ出版)が160万部の売り上げを記録し、2007年10月に新垣結衣主役で映画化され、全国公開された。

 

 だが、このような携帯小説ブームを、若者の書籍への回帰と考える文芸評論家はほとんどいない。

 

 それは、「携帯電話に搭載されている日本語変換ソフトの性能が悪く、誤字・脱字や語彙量の不足を招きやすい」、「文章に絵文字やギャル文字などが含まれていることがあり、読みにくい・環境によっては読めない場合がある」、「性的・暴力的な描写のあるものが多い」といった指摘だ。

 

 しかし、高評価する文芸評論家の意見もある。「平易な文章で記述されることが多く、難しい漢字や言い回しを知らなくても読むことができる」、「短いセンテンスで構成されるため、文章が軽く読みやすい」、「メールで日常使っているような文体のため、親近感を覚える」など小説の新しい形と捉える向きもある。

 

 反対派は小説の文学性にこだわる人間で、賛成派は、小説は時代の空気を吸い込むものであると考えていると言える。

 

 ただ、ケータイ小説の書籍は、市場が飽和化し、頭打ち状態になりつつある。内容が悲劇的で、泣ける作品というラインでしか書かれていないことも、その原因かもしれない。自殺、リストカットなど内容の過激さばかりが加熱してしまって、ドングリの背比べ状態では、読者も飽きてしまうというのは予想がつく。

 このような状況を打破するべく、日本携帯小説大賞という選考も行われ始めた。

▼(第二回携帯小説大賞)           
http://nkst.jp/i/application.php

 

 この賞では、官能小説や過激な表現を含む小説を認めていない。このような試みがどこまで、ケータイ小説の可能性を広げるかわからないが、若い世代に限定されないケータイ小説作家の登場が期待できるかもしれない。

   本をほとんど読まない中高生にとっては敷居が低く、ケータイ小説をきっかけに本を読むようになるかもしれない。また、文を書かせたり読ませたりすることで思考能力を発達させたり、活字への興味を抱かせたりするとも言われている。

 

 ただし、ケータイ小説の多読で、語彙に乏しく稚拙な文章表現に馴染んでしまうことにより、かえって活字離れや表現力不足を悪化させてしまうとの指摘もある。

 

 このような賛否両論ある、ケータイ小説だが、専門家が真剣に批判するようなジャンルは、概して、より大きな市場へ変化することが多い。

 

 このジャンルの語彙力、稚拙な文章克服の課題は、携帯の日本語変換機能の高機能化で十分カバーできるだろう。

 

 純文学がつまらない作品が多くなって売れなくなった理由を、ケータイ小説人気のせいにするのは筋違いだ。

 

 ケータイでの文章リーディングが、小説だけでなく、ノンフィクション、評論など様々なジャンルの入り口となり、出版や映画、テレビ番組などの分野に影響をもたらしながら発展していくのであれば、まだまだ市場として拡大していくことであろう。