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「美しき少年の理由なき自殺」─この本を読んでから僕のライター人生は始まった

「美しき少年の理由なき自殺」(宮台真司、藤井誠二・メディアファクトリー)
 この本を読んでから僕のライター人生は始まったと言っても過言ではない。

 大学四年の就職活動中にネットで知り合いになったライターから言われるがままに出版の世界に入った。

 それは、会社という組織を嫌った行動だったのかもしれないが、今考えると、この本で社会学者の宮台真司氏に憧れるS君が死んでしまったことに共鳴したからかも知れない。 宮台氏は、「人生に意味はないのだから意味より強度を求めよ」とオウム事件以後言い出した。しかし、S君は過剰な強度を求めて、一向に感じられないことに絶望して死んでしまった。その事実を親友のW君が藤井誠二氏に報告して、緊急出版されたのである。

 この本を読み終わって、まったりもできないし、ひきこもりにもなれない、中間層の生きづらさを自分も感じていることに気付いた。

 中学生の時には不登校、高校の時には暴走族、それらの行動の原点は、自分がまさに中間層であることだったのだ。

 そして、それは雑誌に記事を書いたリストカットする少年少女たちにそのまま当てはまるという確信を持ち、取材を続けた結果、ライターデビューからわずか一年後に処女作『リストカットシンドローム』(ワニブックス)を上梓するに至った。

 当時、宮台真司といえば、ブルセラ学者と揶揄されながらも、専門の社会システム理論を武器にテレビで、どんな識者も論破しまくっていた。

 しかも、学者でありながら自身の何百人にも及ぶ女性経験も恥じることなく公言し、型破りな学者として人生に悩める若者に絶大な人気を博していた。

 僕は、宮台氏の存在を知る前に、彼と同じように何百人もの女性と性的関係を持った。それは、短絡的な性的興奮を求めるのではなく、自分をどんどん汚していく自傷行為だったのだ。

 ライターになってすぐに、執筆者両氏と会う機会があり、僕はどうして死なずに、S君は死んでしまったのかという分析を求められた。

 著名な二人に分析を求められて、僕は困惑したが、
「僕が、何人の女と寝ようが、犯罪を起こそうがそれでも世界は回り続けるっていう底打ち感があったからじゃないでしょうか」と答えた。それは死んだS君は、この境地にたどり着く前に絶望してしまったのだろうと思っていたからだ。

 僕のライターとしての専門分野としていたリストカットする少年少女たちは、この底打ち感を得られずに、生きている実感を得るために自分の体を傷付けていた。

 リストカットといえば、人の気を惹くためだけの行為と思われていた時代だったので、僕が雑誌に執筆したり、インタビューを受けて発言する度に、それまでのリストカットに対する認識が変わっていった。

 ただ、僕が言い続けていたことはこの本(「美しき少年の理由なき自殺」)に書いてあることに、多少の精神医学的な知見を付け足しただけである。それ故に、この本との出会いがなければ、いきなりフリーライターとして活躍することは不可能であっただろう。

 後に文庫化され、タイトルが『この世からキレイに消えたい─美しき少年の理由なき自殺』(朝日文庫)に変わったが、新たに加えられた二人の若者を巡る生きることに関する分析は一読の価値がある。

 両氏に直接聞いたことはないが、僕が自殺願望者を取材し続けて、
「最近の若い子は、『死にたい』じゃなくて『消えたい』と言うんです」
と拙著『自殺願望』(彩流社)に書いたことを参考にしてもらったのかもしれない。

 24歳の若造ライターが、編集者・記者経験もないまま8年間もライター業を続けられているのは、この本(「美しき少年の理由なき自殺」)なしには考えられない。

 昨今の若者のいじめ、自殺問題を知る上では絶対に役に立つ本でもある。

 

メディアサーボール執筆記事より