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西日本新聞 朝刊  虐待の親に同情3割(平成23(2011)年11月24日) 本紙が保護者調査ほか

◆平成23(2011)年11月24日 西日本新聞 朝刊

 虐待の親に同情3割 本紙が保護者調査

 西日本新聞は、子育て世代が児童虐待にどのような意識を持ち、いかなる支援を求めているかを探ろうと、福岡市内の母親たちを対象にアンケートを行った。591人から回答があり、相次ぐ虐待死事件について全体の3割近くが「親にも同情すべき事情があったかもしれない」「自分も加害者になるかもしれない」と回答。事件が人ごとと思えないほど、多くの親が厳しい養育環境に置かれている現状をうかがわせた。一方、相談先として「同じ悩みを抱えた親の自助グループ」を挙げる回答が全体の半数以上に上り、悩みを共有できる存在を求めている意識が明らかになった。

 アンケートは福岡市内の認可保育所に子どもを通わせる保護者1312人を対象に実施。45%が回答した。回答者の内訳は94%が母親で、共働きが8割近くを占め、ひとり親も約1割いた。子どもに体罰などをした経験を複数回答で聞くと、全体の4割が「感情にまかせてたたいたりした」と答えた。「傷つく言葉や存在を否定することを言った」は36%で、「食事を与えなかったり長時間放置した」は1%。だが「過去に虐待をした自覚がある」と答えた親は全体の2割弱にとどまり、虐待の受け止め方が人によって異なることがうかがえた。「虐待死事件をどう思うか」との問いには、「ひどい親だ」(36%)が最多で「周囲の人で防げなかったのか」(25%)と続いた。一方、「親にも同情すべき事情があったかも」(22%)、「いつか自分も加害者になるかも」(5%)と、親側に理解を示す回答が3割弱いた。また、「自分も加害者になるかも」と答えた29人のうち7割が「感情にまかせて体罰をした経験がある」としたのに対し、「ひどい親だ」と批判的だった210人では体罰経験は36%と、大きな差が出た。「相談先として必要または有効と考える機関」(複数回答)については、「同じ悩みを抱える親の自助グループ」が5割超で最多。「親身な子育て相談員」と「専門家が答えるインターネット掲示板」もそれぞれ3割を超えた。「子育てに困ったら誰を頼るか」を複数回答で尋ねると、8割超が「親」で、「友人」が5割超。「保育所や小学校」が3割超と続いた。一方、「区役所や児童相談所」は5%にとどまった。「頼る人がいない」「誰にも頼りたくない」も計3%おり、孤立した環境で養育している親の存在が浮き彫りになった。

□調査の方法 10月下旬-11月上旬、福岡市保育協会の協力を得て、市内の認可保育所10施設に通う園児の保護者1312人を対象にアンケート用紙を配布。西日本新聞への直接郵送で591人から回答を得た。回収率は45%。回答者の年齢は、20代14%▽30代65・5%▽40代18・6%▽50代以上0・2%▽不明1・7%。園児との関係は、母親94・2%▽父親3・6%▽無回答2・2%。また、回答者の77・2%は共働きで、12・4%がひとり親世帯だった。

 

◆平成23(2011)年11月24日 読売新聞

 [夜明けを信じて](2)医療現場 SOS感知し早期発見(連載)=福岡

 ◇児童虐待と向き合う

 年間3万人の子どもが運び込まれる北九州市八幡東区の市立八幡病院小児救急センター。ある夜、「子どもの顔に物が当たった」と両親が乳児を連れて駆け込んできた。市川光太郎院長(61)は息をのんだ。呼吸が荒く、けいれんも起こしている。すぐにCT(コンピューター断層撮影)を撮ると、脳内に多量の出血があった。「強く揺さぶられた可能性が高い」。診察室に緊張が走った。市川院長は、30年間で虐待やその疑い事例に少なくとも50件は立ち会ってきた。脳の中の出血はひどく、腕が折られ、髪の毛は引き抜かれている……。脳を損傷した子どもは、大半が亡くなった。「どうしてここまで」。いつも、やり場のない怒りに襲われる。

 児童虐待を見抜く役割が医療現場に求められている。日本医師会は、今年度から各地で虐待防止フォーラムを開き、医療関係者らの意識啓発を図っている。ただ、見た目だけで虐待かどうかを判断するのは難しい。同じように見えるあざの中でも、「二重条痕」と呼ばれる帯状のものは、棒など硬いもので強打された場合に血管が二つに分かれてできる。第三者が意図的にたたいたと考えられるため、虐待が疑われるという。早期発見には、医学的な専門知識が不可欠だ。医療関係者や医学生らに見抜く力をつけてほしい、と市川院長は15年ほど前から行っている専門的な講演や勉強会にも特に力を入れるようになった。講演では、実際に診察した症例の写真を見せながら、傷の特徴を説明する。

 子どもの一番近くにいる母親に、面と向かう必要性も強く感じている。「お母さん、何か悩んでいますか」 母親の子どもに対するものの言い方が異様なほど冷たいなど、診察中に異変を感じると、それとなく尋ねる。子育てに悩んでも頼る人がいない母親も増えている。「核家族化などが進み、虐待やその兆候を社会でキャッチしにくくなっている。我々がSOSを感じ取らないと」

        ◇

 久留米市の聖マリア病院には、小児科の医師やソーシャルワーカーら10人でつくる虐待対応部会がある。「10分に満たない診察時間の中で、どう見つけるか。医師同士の連携も大事」。そう話すのは同病院の秋田幸大・小児科診療部長(43)。虐待の疑いがある場合は、診断内容や子どもの表情、発達障害がないかどうかなどを専用シートに書き込み、部会のメンバーが児童相談所に通告するかどうかを協議する。年間25~30件程度の児童虐待疑い事例を協議し、半数近くは通告している。外傷だけではない。発育は正常か、服が汚れていないか--。どんな小さな情報も、幼い命を救う命綱となっている。〈代表県版採録〉

 

◆平成23(2011)年11月24日 産経新聞

 【未来図は描けるか】大阪のいま(3)学力低下、厳しい現実

 □貧困も影響「勉強できる環境にない」

 文部科学省が平成19年度に実施した43年ぶりの全国学力テスト。都道府県別の成績で、大阪府内の公立小中学校はともに全国平均を大きく下回り、下位に沈んだ。「以前からうすうす感じていた」(府教委幹部)という「子供たちの学力低下」が、紛れもない現実であることを突きつけられた瞬間だった。

 保護者や府民らの批判の高まりを受け、府教委は学力向上策にひた走った。習熟度別授業の拡充、放課後学習に塾講師の派遣、携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の活用、百ます計算や漢字の反復学習の導入。授業改善にも取り組み、課題のある学校には教員を余分に配置するなど、「可能な限りのヒト・カネ・モノを投入」(府教委)した。その結果、小学校では一定の成果があったものの、中学校は依然低迷が続く。

現場の教員の思いは複雑だ。一つは、「学力」のとらえ方による。府南部にある小学校のベテラン女性教諭は学力向上策の必要性は認めつつ、「数値で示されるものは学力のほんの一部にすぎないと教師ならば誰でも知っている」と、学力テストの点数や順位だけに注目が集まる現状を苦々しい思いでみつめる。また、所得の低い家庭の子供ほど成績が低いというデータもあり、貧困と学力との相関関係も学校現場を大いに悩ませる。全国1位の生活保護率。ワースト争いを繰り広げる高い失業率。学用品費や給食費などの「就学援助」を受ける小中学生の割合も全国最多の28%と、指標はどれも大阪の経済的苦境を映し出す。それは学校間、地域間格差としても表れ、府教委によると、学力テストの成績を学校別でみると最大約40ポイントもの開きがあり、同じ市町村でも30ポイントの差が生じたケースもあったという。府東部の中学校教諭は「家に帰っても、とてもじゃないけど勉強できる環境にない生徒たちがいる。教師の力だけでは、どうにもならない」ともどかしさを募らせる。府学校教育審議会の会長を務めた経験もある竹内洋・関西大教授(教育社会学)は「学力は高いに越したことはない」と前置きしたうえで、「学力低下というときに、どこに原因があるのかを冷静にみていく必要がある」と指摘する。子供本人、あるいは学校や教師の努力が欠けているためなのか、それとも家庭の経済的状況によるものか。もし、経済に起因するものならば、教育的アプローチだけでは限界があり、親の就業支援といった社会経済政策も求められる。大阪の教育課題として、いつも真っ先にあげられる学力向上。竹内教授は目標を明確にしたことを評価しながらも、教育の特性を理解しなければどんな対策も「『角を矯めて牛を殺す』ことになりかねない」と警鐘を鳴らす。「教育はいわば、じわじわと効く漢方薬であり農業のようなもの。手術のような外科治療は適さないし、描いた図面通りに製品ができる工業と違って、どんなに丹精しても思い通りにならないこともある。『待つ』『我慢する』『時間をかける』ことが重要だ」

 

◆平成23(2011)年11月23日 読売新聞

 [夜明けを信じて](1)過去 当事者だから寄り添える(連載)=福岡

 ◇児童虐待と向き合う

 雑踏の中で自然と、寂しい目をした子どもに視線が向く。泣く子をあやす切羽つまった様子の母親には、「大丈夫ですか」と声を掛ける。「誰かの助けを待っていた、子どもの頃の自分と重なるんです」 社会福祉士の稲栄康代さん(42)(福岡市)は約4年前から県内の行政機関に身を置き、不登校や発達障害など様々な困難を抱える子どもの相談に応じている。4月からは、福岡市の東区役所で生活保護世帯の子どもの支援も担当するようになった。これまでの相談の中には、虐待が疑われるケースもあった。生活困窮や親の虐待などを理由に児童養護施設などで暮らす子どもは今、県内で約1400人。児童相談所への相談・通告件数も年間約1000件に上る。彼らは手をさしのべてくれる大人の存在を待っているのかもしれない、と思う。幼いの頃の稲栄さんと同じように。

     ◇

 物心ついた時には、施設にいた。父親には妻子があり、母親は盲目。産んではもらったが、育ててもらうことはできなかった。「いつかお父さん、お母さんが迎えに来てくれるよ」。職員の言葉を信じたが、待っても待っても来なかった。親元へ引き取られる子がうらやましかった。18歳で施設を出て、23歳で結婚。見捨てられることへの不安から、夫の機嫌ばかりうかがった。イライラは2人の子どもに向き、まとわりつく幼子に「来るな」とどなった。我が子の世話より、自分のことが優先。自分でも接し方が「マニュアル的」だと感じた。ふと思う。「子どもの頃に愛されなかった、自分の生い立ちのせいではないのか」。32歳で離婚。同じ境遇の人の居場所を作りたいと、大学で学び始めた。虐待を受ける子どもたちと出会うと、その子が何を必要としているのか分かる。家族の絆が切れないよう願いながら支援の方法を模索する。「一緒に考えようよ」。寄り添うことの大切さは誰よりも知っている。

     ◇

 「当事者でなければできない支援だと思うんです」。北九州市で、虐待などの暴力防止に取り組む市民団体「STOP! ABUSE」を作った広渡麗子さん(34)は言う。生まれてまもなく父母が離婚。母親はDV(配偶者からの暴力)を受けていたという。不安定だった母親は、やがて広渡さんに激しい暴力をふるった。拳で顔面を殴られ、鼻骨が折れた。2階のベランダから放り投げられた時は左足を粉砕骨折した。借金の返済のため風俗店で働かされたのは14歳。母親から名前を呼ばれた記憶はない。20代の後半、交際していた男性の言葉が転機となる。「親が産んでくれなければ、今まで出会えた人とも出会えなかったんだ。恨んでいても、死んだら葬式は出してやれよ」 男性にも父親から激しい虐待を受けた経験があった。当事者が持つ、言葉の重みをこの時知った。「傷が癒えずつらい」「いつか自分の子を虐待してしまいそう」。切実な相談に、こう答える。「その気持ち、わかるよ」。こんな風に寄り添うことが自分の母親にも必要だったのではないか。過去と向きあえるようになった今は、そう思う。

     ◇

 11月は児童虐待防止推進月間。さまざまな現場で問題の根深さに戸惑いつつも、最適な支援を模索する虐待防止の支援者を追う。〈代表県版採録〉

 

◆平成23(2011)年11月19日 中国新聞 朝刊

 自治体判断で入園 幼保一体化施設 虐待防止へ政府方針

 政府は18日までに、新子育て施策「子ども・子育て新システム」で2013年度から段階的に導入予定の幼保一体化施設について、親による虐待や育児放棄(ネグレクト)の兆候があり特別な支援が必要な子どもは、市町村の判断で入園させることができるよう児童福祉法を改正する方針を固めた。厚生労働省が10年度に把握した虐待件数は約5万5千件で年々増加。児童相談所が一時保護するような虐待にまでは至らなくても、問題を抱えたケースは相当数あるとみられる。法改正により、子どもの日中の安全や食事を確保するとともに、一定時間を施設で預かることで親子関係の回復につなげ、虐待の防止を図る。現行法では、住民などの通報で市町村が虐待の兆しを把握しても、保育施設利用については親に勧めることしかできない。法改正後は、親が一体化施設の利用を希望しなくても、放置すると深刻な虐待につながると市町村が判断すれば子どもの入園を可能とする。具体的な入園手続きや利用料の扱いについては今後検討する。